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Sidekick Lab
by Ichiro Murata

「F8が一番よく写る」は、本当なのか?

「F8が一番よく写る」「レンズは開放から2〜3段絞るとよい」は本当なのか。中学生のころ父に「F8で撮れ」と教わった私が、約50年後にAIを使って調べ直しました。分かったのは、どのレンズにも当てはまるF8を支持する根拠は見つからなかったこと。それでも私は今も、理由がなければF8で撮っています。

村田一朗|写真家・SideKick開発者

父に教わった絞りを、50年後に調べてみた

私が初めて一眼レフで写真を撮ったのは、中学2年生だった1977〜78年ごろのことです。

自分のカメラではありません。父のカメラを借りていました。記憶ではNikon EMという、絞り優先AEの小さな一眼レフで、フィルムはISO100。学校行事や家族旅行のときに持ち出す、そんな使い方でした。

そのとき父から教わった撮り方は、ほぼ一言でした。

「F8で撮れ。雨や曇りの日は手ブレしやすいからF5.6。」

理由は聞きませんでした。というより、当時の私は理由を考えることもなく、言われたとおりF8で撮っていました。

ここで一つ、はっきりさせておきたいことがあります。

父から「F8はレンズの性能が一番よく出る絞りだから」と説明された記憶は、私にはありません。父はカメラが好きな人でしたが、レンズの性能について語ることはほとんどなかったと記憶しています。

つまり私にとってのF8は、最初は「理由の分からない数字」でした。

それから約50年。

私はその間ずっと写真を撮り続け、レンズも数百本規模で使ってきました。そして今回、AIを使えるようになったのを機に、あらためて調べてみることにしました。

「F8は、本当に一番よく写る絞りなのか?」

先に断っておくと、この記事は「父の教えは正しかった」とも「間違っていた」とも結論しません。父はそもそも理由を言わなかったのですから、評価のしようがないのです。

ただ、調べてみると、この「F8」という数字をめぐる話は、私が思っていたよりもずっと面白いものでした。

「F8」と「2〜3段」は、私だけの話ではない

大人になって自分のカメラを買ったのは1986年ごろ。最初は「友人と旅行に行くから」という程度の動機でした。

それが1990年ごろになると、「せっかくカメラがあるから上高地にでも撮影に行こう」と、撮ること自体を目的に出かけるようになります。レンズを少しずつ買い足し、写真雑誌を読み、カメラ店で長話をし、Nikonのレンズカタログを集めては読みふけっていました。

「レンズは開放から2〜3段絞ると一番よく写る」という話を知ったのも、たぶんこのころです。

雑誌だったのか、カメラ店の店員さんだったのか、カタログだったのか。正直なところ、どこで最初に見聞きしたのかは覚えていません。ただ、当時の写真文化の中では、それはごく当たり前に流通している「常識」でした。

今でもそうです。たとえばレンズ測定ソフトの技術文書には、「レンズは典型的には開放から2〜3段絞ったところに最適絞りを持つ傾向がある」といった記述があります。F1.4のレンズならF2.8〜F4、F4のズームレンズならF8〜F11。「2〜3段」と「F8」は、こうして同じ話の中に並んで出てくることが多い数字です。

ただ、白状しておくと、1990年当時の私はレンズの「性能」をそれほど気にしていませんでした。

気にしていたのは、主に開放F値によるボケの量です。「このレンズはF5.6とF8のどちらが一番解像するか」といった最良絞りの追求は、ほとんどしていません。F8は、特に理由がなければ使う絞りとして、いつのまにか手に馴染んでいただけでした。

そもそも「一番よく写る」とは、何のことか

話を進める前に、一つ整理しておく必要があります。

「一番よく写る」とは、何のことでしょうか。

考えてみると、写真で「よく写る」と言うとき、私たちはかなり違うものを一つの言葉で呼んでいます。

  • ピントを合わせた面の細部が、どれだけ細かく写るか(解像)
  • 手前から奥まで、必要な範囲にピントが合っているか(被写界深度
  • 背景がどのくらい、どんなふうにぼけるか
  • 手ブレや被写体ブレを避けられるシャッター速度が確保できるか
  • プリントや画面で見たときに、どう見えるか
  • そして、撮りたかった写真になっているか

「F8が一番よく写る」「2〜3段絞ると一番よく写る」という言い方が指しているのは、このうち最初の一つ、ピント面の細部がどれだけ細かく写るかです。

この記事では、まずその意味で「一番よく写る」を調べます。他の意味については、後半で戻ってきます。

収差のない理想のレンズなら、開放が一番よく写る

意外に思われるかもしれませんが、ここから始めるのが一番分かりやすいのです。

レンズには、設計や製造に起因する「収差」があります。絞りと写りの関係も、収差と回折という言葉も、私は以前から理屈としては知っていました。ただ、それは概念的な理解にとどまっていて、今回あらためて順を追って確かめることになりました。

いま仮に、収差がまったくない理想のレンズがあったとしましょう。

そのレンズでは、ピント面の細部の写りは、開放が一番よく、絞るほど少しずつ悪くなります。

理由は「回折」です。光は絞りの穴を通るときにわずかに広がり、この広がりはどんなに優れたレンズでも避けられず、穴が小さくなるほど大きくなります。回折に「F11から始まる」というような境目はなく、F1.4でも起きているし、F32でも起きている。ただ、絞るほど大きくなるだけです。

この理想のレンズを計算してみると、写りはなだらかに下がっていく一本の曲線になります。F8はその途中にある一点にすぎず、どこにも特別な点はありません。

つまり、理想のレンズには「少し絞ると良くなる」という現象がそもそも存在しないのです。

そして、この理想のレンズの数値は、実際のレンズにとっての「上限」です。同じ絞りで、これより細かく写る実レンズは存在しません。

でも実際のレンズは、開放が甘いことがある

では、なぜ「絞ると良くなる」と言われるのでしょうか。

それは、実際のレンズが理想のレンズではないからです。

実際のレンズでは、開放付近で収差がピント面の写りを制限していることがあります。たとえばZEISSの技術資料には、50mmレンズをf/2からf/5.6に絞ると測定した解像の数値が全体的に大きく上がる例や、開放F1.4の85mmレンズ(Planar 1.4/85)の測定でもっとも高い数値が出たのはf/8で、そこから先は絞るほど下がっていく例が示されています。

こういう例があるので、「開放は甘い、絞ると良くなる」という実感は、多くの人が持っているわけです。

ただし「ことがある」であって、「必ずそうなる」ではありません。設計によって収差の量も種類も違い、同じ型番でも個体差が報告されています

絞ると、なぜ良くなるのか

絞りを絞るというのは、レンズの中心付近を通る光だけを使い、外周を通る光を使わなくすることです。

レンズの収差の多くは、外周を通る光ほど大きくなります。ですから、絞って外周を切り捨てると、収差の影響が減ります。開放でにじんでいた点が、絞ると締まってくる。これが「絞ると良くなる」ことの、大まかな仕組みです。

ただし、絞れば収差がなくなるわけではありません。

減るのは、外周に偏った収差の影響です。歪曲や倍率色収差のように、絞ってもほとんど変わらない収差もあります。

その代わり、回折は絞るほど増え続ける

ここで、さきほどの理想レンズの話が戻ってきます。絞って収差の影響が減っていく一方で、回折による広がりは絞るほど増え続けます。収差の影響は外周を切り捨てた時点で急速に小さくなりますが、回折はどこまでも増えていく。だから絞っていくと、どこかで「収差が減る効果」を「回折が増える効果」が上回ります。

その先は、絞るほど写りは下がる一方です。F16やF22まで絞ったときに何が起きるか、被写界深度との兼ね合いをどう考えるかは、別の記事で扱う予定です。ここでは「絞るほど回折は増える」ということだけ押さえておいてください。

だから途中にピークが出る——ただし、位置は固定ではない

開放側では収差、絞り側では回折。

この二つの効き方がぶつかるところに、ピント面の写りの「ピーク」が出ることがあります。「2〜3段絞ると一番よく写る」「F8が一番」という経験則は、このピークの話をしているわけです。

合成球面収差モデルの計算結果を1枚のグラフにした図。横軸は絞り(F1.4〜F32)、縦軸は開放の回折限界を100%とした解像性能の相対値。D(回折限界、収差ゼロ)は灰色の破線で、開放の100%から絞るほど連続的に下がる。A(収差によって残る割合)は白い点線で、開放側で低く絞ると上がり、F2.8付近でほぼ100%に達する。T(総合解像性能、収差+回折)はオレンジの実線で、開放側では収差で低く、途中でピークになり、その後は回折限界に沿って下がる。ピークには「このモデル条件でのピーク(収差の改善と回折の低下が競合)」の印。上部に「収差改善の効果が大きい/回折が支配的」の見出し。図中に「MODEL RESULT/合成球面収差モデルの計算結果/条件:収差2 waves・開放F1.4相当・550 nm/実レンズの測定結果ではありません。T=A×D(掛け算)/回折は開放から存在し、絞るほど回折限界が連続的に下がります」と表示。

図1:なぜ途中に「一番よく写る領域」が生じることがあるのか。図2と同じ合成球面収差モデル(収差2 waves[波長単位]・開放F1.4相当・波長550 nm)で計算した3本の曲線を、開放の回折限界を100%とした相対値で並べています。D(回折限界)は収差ゼロの理想レンズの上限で、回折は開放から存在し、絞るほど連続的に下がります(どこかで「始まる」ものではありません)。A(収差によって残る割合)は、同じ絞りの回折限界に対してどれだけ残っているかの比で、開放側で低く、絞ると上がります。T(総合解像性能)はその掛け算 T=A×D で、開放側では収差が、小絞り側では回折が性能を制限し、収差の改善と回折の低下が競合する途中でピークになります。収差の改善がほぼ終わったあとは、回折限界に沿って下がるだけです。この図はモデルの計算結果であり、実レンズの測定結果ではありません。ピークの位置はこのモデル条件のもので、収差の量や種類で動きます(図2)。AとDの交点が最良絞りを意味するわけでもありません。ここでの「収差」は、絞ると影響が減り得る収差を指します(歪曲や倍率色収差のように絞っても変わらない収差は含みません)。※このモデルでは、焦点距離そのものは変数に含まれていません。理想的な回折限界は、同じ波長・実効F値なら焦点距離そのものでは変わりません。実レンズでは光学設計や収差の種類・量などが異なるため、総合性能の曲線やピークになる絞りは変わり得ます。

私自身、回折はあるところから急に悪化するものだと思っていました。でも、この3本の線を見ると違いました。回折限界は開放から連続的に下がっていて、収差の改善がほぼ終わったあとも、絞るほど解像性能は少しずつ下がり続けます。

これを見ると、撮影上の理由がないのに絞るのは損だな、と思います。

もちろん、被写界深度が必要なら絞りますし、スローシャッターにしたければ絞ります。撮りたい写真に理由があるなら、その理由を優先します。絞りをどう決めるかは、後半で改めて書きます。

問題は、そのピークがどこに出るかです。

今回は、球面収差という代表的な収差だけを仮定した合成モデル(開放F1.4相当)で、収差の量を変えながらピークの位置を計算してみました。実際のレンズを測ったものではなく、「もし収差がこれだけあったら」という仮定の計算です。

結果として、ピークの位置は一つに決まりませんでした。収差の量を変えると、ピークは開放そのものから、開放から2段絞ったところまでの範囲で動きます。絞るときにピントを合わせ直すかどうか、何を「よく写る」の物差しにするかでも、位置が変わります。そして、今回検証した合成モデルの条件の範囲では、F8がピークになる条件はありませんでした。

念のため、これは合成モデルの結果であって、実際のレンズがこうだという話ではありません。実際のレンズにはモデルに入れていない収差がいろいろあり、開放F値もF1.4とは限りません。先ほどのZEISSの85mmのように、実測では開放から5段のf/8にピークが出た例もある。そうした例があること自体が、ピークの位置が一つに決まらないことを示しています。

球面収差だけを仮定した合成モデルで、収差量を0・0.25・0.5・1・2(波長単位)と変えたときのMTF50を絞りごとに示したグラフ。収差量が増えるほど開放側の値が下がり、ピークの位置が開放からF2付近まで小絞り側へ動く。F8には目印の縦線があるが、どの曲線もF8でピークにならない。図中に「MODEL RESULT/合成球面収差モデル/実レンズの測定結果ではありません」と表示。

図2:合成モデルで計算したピント面の細かさ(MTF50)と絞りの関係。球面収差だけを仮定し、開放F1.4相当・波長550 nm、絞るたびにピントを合わせ直す条件(収差量ごとに一番良い位置)で計算しています。オレンジの点が各曲線のピーク。今回検証した合成モデルの条件の範囲では、F8がピークになる条件はありませんでした。ただし、これは実際のレンズ一般についてF8がピークになることがない、という意味ではありません。この図はモデルの計算結果であり、実レンズの測定結果ではありません。

言い換えると、こうなります。

ピークは存在し得る。しかし、その位置はレンズの収差の量、ピントの置き方、何を「よく写る」の物差しにするかによって動く。

「2〜3段」は傾向。でも「F8」は固定できない

ここまでを踏まえて、冒頭の二つの常識を見直してみます。

まず「レンズは開放から2〜3段絞ると一番よく写る」。

これは、技術文書が「典型的には」という言い方で述べている経験則です。開放側で収差が支配的なレンズなら少し絞ったところにピークが出るのですから、理由のある傾向ではあります。

けれども、法則ではありません。理想のレンズには「段数」そのものが存在しませんし、実際のレンズではピークの位置が収差の量や物差しで動きます。「2〜3段」は、その動く範囲のどこかを指す目安であって、どのレンズにも当てはまる決まりではないのです。

次に「F8が一番よく写る」。

「F8」という経験則がいつ、どこから一般化したのかは、今回の調査では分かりませんでした。調べた範囲で具体的に確認できた実測例は、上で紹介したZEISSの85mm一本です。しかもその資料では、実写で見比べると最も良かったのはf/11で、「曲線の形から想像されるほど差は大きくない」とも書かれています。同じレンズでも、何で判断するかで「一番」がずれるのです。

つまり、どのレンズ・どの条件にも当てはまる「F8が一番よく写る」を支持する根拠は、見つかりませんでした。

ただし、これも正確に言っておく必要があります。

見つからなかったのは「どのレンズにも当てはまる」という普遍的な根拠です。特定のレンズ・特定の条件でF8がピークになることは、当然あり得ます。少なくとも今回確認できた実測例については、「そのレンズではF8だった」ところまでは言えます。ただ、それは「そのレンズでは」という話であって、「どのレンズでも」へ広げる根拠にはなりません。

表1:「何段絞ると最良か」は、条件を決めなければ一つの数字にならない

対象 何を「最良」としたか 結果 性格
収差のない理想のレンズ ピント面の細かさ(MTF50、550 nm) 開放が最良(0段)。絞るほど低下 計算値
合成球面収差モデル(開放F1.4相当) 同上。収差量とピントの置き方を変えて計算 ピークは開放〜2段絞り。収差量・ピントの置き方・物差しで動く 合成モデル(実レンズではない)
ZEISS Planar 1.4/85(メーカー技術資料) 測定したMTF f/8(開放から5段)が最高 一本の実測例
同上 実写を見比べた評価 f/11が最良。「曲線の形から想像されるほど差は大きくない」 一本の実測例(判断基準が違うと「最良」もずれる)
レンズ測定ソフトの技術文書 「最適絞り」の一般的傾向 「典型的には開放から2〜3段」 傾向の記述(法則でも推奨値でもない)

計算値・合成モデル・一本の実測例・傾向の記述は、それぞれ性格の違う情報です。同じ表に並べているのは比較のためで、どれかが「正解」だという意味ではありません。

では、F8という固定の数字ではなく、「開放から2〜3段」という相対の数え方なら、どのレンズでも一番よく写る絞りを決められるのか。その経験則のほうは、次の記事「レンズは2〜3段絞ると一番よく写る」は、本当なのか?で調べました。

数字だけが残るとき

ここで、父の話に戻ります。

父は「F8で撮れ」と言いましたが、その理由は言いませんでした。

後年、私はこう解釈するようになりました。マニュアルフォーカスでも多少のピントのずれをカバーできる、被写界深度が確保できる、レンズの写りも安定している——初心者向けの設定として、F8にはいろいろな実用上の意味があり得た、と。

ただし、これは私の解釈です。父がそこまで考えていたかどうかは、私には分かりません。

大事なのは、理由が伝わらずに数字だけが残ると、その数字は条件を失って独り歩きするということです。

「2〜3段」には、収差と回折という理由がありました。一方、「F8」という数字がどこから一般化したのかは、今回の調査では分かりませんでした。それでも、理由や条件が抜け落ちて数字だけが残ると、それがいつの間にか「決まり」に見えてしまうことがあります。「どんなレンズでも」「どんな写真でも」という顔をし始めるのです。

同じことは、たとえば「山岳写真はF22」という言い方にも起きているように、私には見えます。これについては、F22まで絞ると何が起きるのかという話と合わせて、別の記事で書くつもりです。

絞りに限った話でもありません。私自身、35mm判の許容錯乱円「0.03 mm」を、どんな条件の数字なのかを問わないまま、25年以上使ってきました。その話は「あなたの許容錯乱円はいくつ?」に書きました。

では、絞りは何で決めるのか——撮りたい写真が先

写真の講評や指導をするとき、私は「F8で撮りなさい」とは教えません。

最初に聞くのは、いつもこれです。

「何が撮りたいんですか? 脳内イメージは?」

背景を大きくぼかしたいのか。手前から奥まで全部にピントを合わせたいのか。水の流れをスローシャッターで写したいのか。動く被写体をブレなく止めたいのか。あるいは流し撮りをしたいのか。

そのイメージの中に絞りに関係する目的があれば、絞りはそこから決まります。ぼかしたいなら開放側へ。奥までピントが欲しいなら絞る側へ。シャッター速度を稼ぎたいなら開ける。

どのくらい絞れば必要な範囲にピントが収まるかは、焦点距離・F値・撮影距離から計算できます。Sidekick Labの被写界深度計算ツールでは、絞りを変えると被写界深度がどう変わるかを、その場で確認できます。

私自身、1990年前後には、すでに開放・F8・F22を目的によって使い分けていました。たとえば20mm F2.8をF22まで絞り、太陽を画面の中に入れて、わざとゴーストを出すような写真を好んで撮っていた時期があります。「F22は回折で甘くなるから使わない」ではなく、「その写真にはF22が要る」から使う。それだけのことです。

ポートレートや星景では、開放で撮ります。

そして、開放で写りが足りないと感じたときに私がやるのは、「一段、二段絞って改善する」ことではありません。開放で必要な写りが得られるレンズに替えることです。開放が必要な写真にとって、「F2.8まで絞れば一番よく写る」という評価は、あまり意味を持たないからです。

正直に言えば、私にとって最高の解像度は、撮影のときの優先順位としては低いところにあります。甘い描写のレンズに出会っても、「これはそういうレンズだ」と受け止めることが多い。被写界深度やブレに比べれば、解像は後回しでいい。それが私の写真の撮り方です。

私は今も、理由がなければF8

では、目的が特にないときはどうするか。

数百本規模のレンズを使ってきましたが、私は「このレンズの最高性能はF○」という値を、一本ずつ覚えて撮るような運用はしていません。明るい単焦点でも暗いズームでも、基本は同じです。

特別な理由がなければ、F8。

これは中学生時代から今日まで変わっていない、私の基本の運用です。

そして今回、F8について調べ終えた後も、この運用は変わりませんでした。私の言葉でいうと、こうなります。

「ボカしたいとか、パンフォーカスにしたいとか、スローシャッターにしたいとか、ブラしたくないとか、流し撮りしたいとか……理由が無ければF8。」

念のために付け加えると、これは今回調べて理屈を理解したから決めたことではありません。ずっと前からそうしてきたことが、調べた後も変わらなかった、というだけです。

「F8が一番よく写る」と「理由がなければF8」は、別の話

ここまで読んでいただければ、この二つが別の命題だということが伝わったと思います。

F8が一番よく写る」は、レンズの性能についての主張です。どのレンズにも当てはまる話として、それを支持する根拠は見つかりませんでした。ピークは存在し得るけれど、その位置はレンズと条件で動く。F8が最良になるレンズもあれば、そうでないレンズもある。

理由がなければF8」は、撮影のときの私の実践です。撮りたい写真に絞りを変える理由があればその理由に従い、理由がなければF8を初期値として使う。これはレンズの性能の話ではなく、絞りを決める順番の話です。

1977〜78年ごろに父から教わった「F8で撮れ」が、科学的に正しかったのかどうか、私には分かりません。父は理由を言わなかったし、私は聞かなかった。ただ、約50年後に調べてみて分かったのは、「F8が一番よく写るから」という理由でなら、あの教えを支えることはできない、ということでした。

それでも、私はこれからも、理由がなければF8で撮ると思います。

もしあなたが「一番よく写る絞り」を探しているのなら、その前に一つだけ決めておくことがあります。

何を、よく写したいのか。

撮りたい写真から絞りを決める。理由がなければF8。

私の答えは、今のところこれです。